NST(栄養サポートチーム)の
活動とその意義

財団法人東京都保健医療公社 大久保病院
栄養科長 竹内 理恵


近年、NST(Nutrition Support Team=栄養サポートチーム)という、病院内での医療チームの活動が注目を集めています。これは医師や管理栄養士、薬剤師、看護師、臨床検査技師などの専門スタッフが連携し、それぞれの知識や技術を持ち合い、最良の方法で栄養支援をするチームのことです。その具体的な活動内容について、早くからNSTを立ち上げて活動している大久保病院栄養科長の竹内理恵さんに伺いました。

様々な医療スタッフがチームを組んで患者さんの栄養管理を行う

■まず、NSTとはどのようなものかについてお聞かせください。
●NSTは栄養サポートチームとも言います。様々な医療スタッフがチームを組み、患者さんに最もふさわしい方法で栄養状態を良好に保つことを目的とするチームのことです。栄養状態が悪いと、どれだけ治療してもなかなか回復できませんし、また手術後に感染症や合併症を起こしてしまうこともあります。このような問題を解決するための栄養支援チームがNSTです。

■栄養状態が悪い患者さんとは、例えばどのような方なのでしょうか。
●高齢者の方などは食欲が失われがちですし、また、脳卒中の後遺症などで嚥下がうまくできない患者さんもいらっしゃいます。特に当院は腎臓病や、糖尿病などの生活習慣病の患者さんが多く、入院患者さんは60歳以上の方が4分の3を占めます。ですから栄養状態の把握と管理が非常に重要になってきます。
NSTの活動は、まず栄養状態や褥瘡(床ずれ)の有無などを調べ(スクリーニング)、それらをもとに栄養管理が必要かどうかを判断し(アセスメント)、それに基づき患者さんに合った栄養管理方法を選択するという手順で行います。

■大久保病院でNSTが稼働し始めてどれくらいになるのでしょうか。
●NSTは1970年にアメリカで始まったものですが、なかなか日本では根づきませんでした。当院では1993年につくられたNSグループが現在のNSTの原点で、外科医とNSナースが、在宅での術後経腸栄養※の患者さんの栄養管理を始めました。その後、栄養士法の改正により栄養指導の重要性がクローズアップされ、私たち管理栄養士も積極的に勉強して栄養アセスメントに参画しようということになりました。また、日本経腸栄養学会でも2001年にNSTプロジェクトを立ち上げたのですが、当時当院の外科医長だった丸山道生先生がそのプロジェクトのメンバーだったこともあり、栄養科と薬剤科が参画して、2002年10月に当院も正式にNSTを設置することになりました。
※経腸栄養:鼻から挿入したチューブ、またはいろう胃瘻(腹壁を開けて胃までチューブを通すルート)などを介して胃や腸に栄養剤を注入する方法。

大久保病院のNSTの役割と目的

1.栄養状態を評価する。
2.適切な栄養管理がなされているかを点検する。
3.最もふさわしい栄養管理法を指導・提言する。
4.栄養管理に伴う合併症の予防と早期発見を行う。
5.栄養管理上の疑問に答える。
6.資材・素材の無駄を省く。
7.早期退院や社会復帰を助ける。
8.新しい知識の習得・志気の向上を図る。


週1回のNST回診によって患者さんの栄養状態を確認

■NSTの具体的な活動についてお教えください。
●当院のNSTのメンバーは、医師が4名(外科医、内科医、リハビリテーション科医)、看護師11名(交代制)、管理栄養士2名、薬剤師2名、臨床検査技師2名、地域医療連携室事務員の総勢22名です。他に言語聴覚士が必要に応じて参加しています。
 活動として、最初に行うのがNST回診の対象となる患者さんの選出です。まず入院時スクリーニングというものがあるのですが、これは患者さんの入院時に褥瘡に関する危険因子を評価するものです。褥瘡の発生と低栄養は密接な関係にあるため、その評価は非常に重要です。当院にはNSTの他に褥瘡対策チームがあり、このチームが褥瘡やその危険因子の状態を回診によって確認・治療しています。
 NSTが行うスクリーニングとしては、入院患者さんを対象とした定期的な血清アルブミン値のチェックがあります。アルブミンは血液中に最も多く存在する血清蛋白質で、肝臓で合成されるので栄養状態や肝障害の程度を判定するのに役立ちます。検査科では週に1回、アルブミン値が3.0g/dl以下の患者さんの抽出を行っています。
 その他、医師からの相談や、地域医療連携室から送られてくる在宅療養患者さんの入院情報、栄養障害、食思不振や嚥下困難などの報告を栄養科がまとめ、低栄養患者スクリーニングリストをつくります。これをもとにカンファレンス(症例検討会議)で相談してサポートする患者さんを決めます。
 その患者さんに対して、週に1回、NSTのメンバーが集まって定期回診を行い、患者さんの状態を確認します。栄養科では、回診当日にNST回診リストと、Human Nutrition Report(身体計測、生化学検査、血液検査、必要エネルギー量、栄養方法などのデータをまとめた個人ファイル)を作成します。これに、患者さんの回診時の計測値や栄養摂取状況を書き加えて、これらの資料を参考に、回診終了後、チーム全体で各患者さんに対する栄養評価と症例検討を行い、栄養療法を検討するという流れです。

■低栄養の患者さんの比率はどれくらいなのでしょうか。
●当院では低栄養の基準を、アルブミン値3.0g/dl以下としていますが、これに該当する方は入院患者さんの3割程度です。しかしアルブミン値が低い患者さんの全てがNST回診の対象になるわけではありません。その他の状況も検討して、実際にNST回診の対象となる方は月平均26名程度です。
 NST回診の初期依頼の内容としては、平成16年度下半期でみると褥瘡が約4割、褥瘡+低栄養が約2割、低栄養が約2割となります。褥瘡は院内で発生するものより持ち込みのケースが多い傾向にあります。



体力を回復するための栄養法の検討

■栄養法はどのように選択するのでしょうか。
●NST回診が終わったらチームでカンファレンスを行い、患者さんの記録を見て最も適した栄養法の検討を行います。栄養法としては、口から食べる「経口摂取」、鎖骨下静脈などから大静脈までカテーテルを入れて輸液ラインを確保し、このラインから栄養剤を投与する「中心静脈栄養」法、鼻腔や胃瘻(腹壁から胃へのルート)などからチューブを挿入して胃や腸に栄養剤を注入する「経腸栄養」法があります。
 経腸栄養は、口から栄養を摂取できない場合に行います。それによって体力がつけば再び経口摂取ができるようになります。私たち栄養士はとかく口からの栄養摂取を重要視しがちですが、最近は考え方が変わり、経口摂取できない方は経腸栄養によってまず体力を回復させることに重点を置くようになってきました。

■中心静脈栄養よりも経腸栄養の方がよいのでしょうか。
●中心静脈栄養ですと、腸を使わないため腸内細菌叢のバランスが崩れて免疫力が低下するという問題があります。また、腸内細菌によってビタミンが活性化されてそれが吸収されるわけですが、中心静脈栄養だと腸内細菌がつくるそれらの栄養素が取り入れられないという問題もあります。
 本来は経口摂取が一番良いことは確かです。経口摂取によってインスリンの分泌も促されますし、噛むという行為は運動機能の一番の基本でもあり、自分の口で食べられることが回復を見る上でのバロメーターでもあります。ですから、誤嚥の危険がない場合は経腸栄養の方でも経口摂取に移行していただくための準備として口を動かすためのリハビリを検討します。

■自分の口から食事を食べられる患者さんはどれくらいいるのですか。
●全入院患者さんのうち85%程度です。1回200食程度ですが、食事の種類や形態は非常に細かく分かれます。というのも、当院には人口透析室が25床あり、腎臓病の患者さんも多くいます。透析導入前後では食事内容が変わりますし、患者さん個々の病態によっても個人対応が多くなります。また、献立自体は同じものでも、刻み食やミキサー食というように形態も様々ですから、食事の種類としては100種類以上になります。
 また、食が細い方には、食事の量を半分に減らし(ハーフ食)、栄養補助食品をプラスする場合もあります。栄養補助食品は、必要な栄養素が摂取基準程度の割合で含まれています。褥瘡の重い方に対しては、鉄や銅、亜鉛などを強化した栄養補助食品も用いることもあります。また、嚥下が困難な方にはとろみをつけた食事を提供しています。


入院患者さんにとってのはっ酵乳、乳酸菌飲料の意義とは

■はっ酵乳や乳酸菌飲料の意義を実感されることはありますか。
 術後の患者さんは食事を多く召し上がることができませんので、乳製品のような補強食品を比較的よく用います。先ほども言ったように中心静脈栄養を行っていた方の場合、腸内細菌が減少していますから、外科の先生からも術後の乳酸菌飲料は有用だという話をよく聞きます。また、良質蛋白の食品は術後の感染症予防にも有意義だと思います。中には牛乳が飲めない方もいらっしゃいますから、ヨーグルトを使うこともあります。ヨーグルトは整腸作用がありますから、腸の疾患がある患者さんに上手に使うといいのではなかと思います。

■嚥下状態が悪い患者さんに対してはいかがでしょうか。
 特に高齢の患者さんの場合、ヨーグルトは比較的食べやすいようです。硬さも適当で、むせにくいようですね。最近のヨーグルトは比較的柔らかなものもありますし、極端に甘いものも少ないので使いやすいと思います。

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