一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会
発酵乳乳酸菌飲料公正取引協議会

消化管内フローラ改善作用

乳酸菌は消化管内フローラのバランスを整えることで様々な病気を予防・改善します。

口腔内フローラの改善(歯周病の改善)

口腔内には500種以上の細菌が生息するといわれ、口腔内フローラを形成しています。乳酸菌は、歯周病菌の増殖を抑制して口腔内フローラを良好にし、歯ぐきを丈夫で健康に保つ機能が報告されており、歯周病の改善につながることが期待されています。

乳酸桿菌による歯周病の改善効果(動物試験)

乳酸桿菌(L.ガセリ)をマウスに経口投与し、歯周病菌を感染させたところ、乳酸桿菌を投与しなかった群に比べ、歯槽骨の吸収※や歯肉の炎症が抑制されました。
※歯槽骨の吸収…歯周病などの細菌感染で誘発される炎症により、歯を支える歯槽骨が溶けてしまうこと。
〔出典:Kobayashi R. et al., Sci Rep., 7:545(2017)〕

胃内のピロリ菌の低減

ピロリ菌は正式名をヘリコバクター・ピロリといいます。強酸性の胃の中でも生息でき、胃・十二指腸潰瘍、胃がんの主要な発症要因とされています。厚生労働省研究班の調査によると、日本でのピロリ菌感染者は3,500万人を超えるとされ、とくに中高年で多い傾向にあります。

乳酸桿菌によるピロリ菌の除菌作用

ピロリ菌を持つ健康な成人6人に、乳酸桿菌(L.ガセリ)が含まれる90gの発酵乳を1日2個(1日当たり乳酸桿菌約10億個)、8週間摂取してもらい、その摂取前後に内視鏡検査で胃粘膜組織を採取してピロリ菌数を比較したところ、全員のピロリ菌数が減少しました。
〔出典:Kimura K., Food Sci. Technol. Res., 10, 1-5(2004)〕

乳酸桿菌によるピロリ菌の除菌成功率の向上

ピロリ菌患者に、通常の除菌治療に加え乳酸桿菌(L.ガセリ)が含まれる112gの発酵乳を1日2個、治療開始の3週間前から4週間摂取してもらったところ、通常治療群に比べ、ピロリ菌の除菌成功率が向上し、10%以上の上乗せ効果が認められました。
※ITT解析…試験から脱落した対象者を含めて解析する臨床試験研究の解析方法の一つ。
〔出典:Deguchi R. et al., J. Gastroen. Hepatol., 27, 888-892(2012)〕

腸内フローラのバランス改善

生きたまま腸内に届いた乳酸菌がつくる乳酸、ビフィズス菌がつくる乳酸と酢酸は、腸内を弱酸性(pHを低下させる)にして有用菌にはすみやすく、有害菌にとってはすみにくい環境をつくります。
乳酸桿菌によって腸内の有用菌であるビフィズス菌が増え、有害菌である大腸菌群が減少し、腸内フローラのバランスが改善します。また、ビフィズス菌でも乳酸桿菌の増加と大腸菌群の減少が確認されています。

乳酸桿菌による腸内フローラのバランス改善作用

健康な成人に乳酸桿菌(L.カゼイ)を100億個以上含む乳酸菌飲料を1日3本、4週間飲用してもらったところ、飲用前に比べて飲用後のビフィズス菌が増加し、大腸菌が減少しました。
〔出典:田中隆一郎ら、腸内フローラと食餌(第12回理研腸内フローラシンポジウム記録集)、学会出版センター、 85-104(1994)〕

ビフィズス菌による腸内フローラのバランス改善作用

健康な成人にビフィズス菌(B.ブレーベ)を100億個以上含む発酵乳を1日3本、4週間飲用してもらったところ、飲用前に比べて飲用後の乳酸桿菌が増加し、大腸菌群が減少しました。
〔出典:朝原 祟ら、腸内細菌学雑誌、12、 89-96(1999)〕

病気や食中毒の原因となる有害微生物の感染防止

乳酸菌がつくる有機酸(乳酸や酢酸)は腸内の有害菌だけではなく、体外から侵入してきた有害微生物を撃退します。また、酸による直接的な攻撃だけではなく、腸の免疫機能を高めることで、病気や食中毒の原因となる有害微生物やウイルスの感染を防ぎます。

ビフィズス菌による有害菌の除菌作用

腸内細菌の一種である毒素産生型フラジリス菌(ETBF菌)は大腸がんのリスク因子となっていると考えられています。この菌を保有する健康な成人に、ビフィズス菌(B.ロンガム)入りヨーグルト(ビフィズス菌は32億個/日)または牛乳を8週間摂取してもらったところ、ビフィズス菌入りヨーグルトを摂取したグループでのみETBF菌が摂取前の1/3程度まで減少しました。また摂取をやめたところ、ETBF菌数が期間の経過とともに試験前と同じ程度に戻りました。
〔出典:Odamaki T. et al., Anaerobe, 18, 14-18(2012) 〕

乳酸桿菌による急性下痢症の発症の抑制

子どもは大人に比べて免疫機能が十分に発達していないため、急性下痢症の発症率も高まります。世界的に見て小児の下痢発症の多いインドの子ども(1~5歳)に、乳酸桿菌(L.カゼイ)を65億個含む乳酸菌飲料を1日1本、12週間飲用してもらったところ、プラセボ(偽薬)※群に比べ、急性下痢症の発症が14%抑制されました。
※プラセボ…偽薬ともいう。見た目や味に違いがなく、評価対象の成分を含まないもの。
〔出典:Sur D. et al., Epidemiol. Infect., 139, 919-926(2011)〕

腸内の有害物質の低減(腸内環境の改善)

乳酸菌の摂取により腸内の有害菌が減ると、有害菌がつくりだす様々な有害物質(インディカン、p(パラ)-クレゾール、アンモニア)の生成が抑制されます。
また乳酸菌は、体内に発生した変異原性物質などの発がん物質を吸着して便と一緒に体の外に排出することで、発がんのリスクを低減させます。

乳酸桿菌またはビフィズス菌による腸内有害物質の減少

健康な成人に乳酸桿菌(L.カゼイ)を65億個以上含む乳酸菌飲料を1日2本・2週間、もしくは、ビフィズス菌(B.ブレーベ)を10億個以上含む生菌製剤を1日2回・28日間飲用してもらったところ、飲用期中の尿中のp(パラ)-クレゾール※が飲用前に比べて減少しました。一方、プラセボ(偽薬)群ではp(パラ)-クレゾールが増加しました。
※p(パラ)-クレゾール…腸内の有害菌によってたんぱく質からつくられる発がん促進物質。
〔乳酸桿菌データの出典:Preter V. D. et al., Br. J. Nutr., 92, 439-446(2004)〕
〔ビフィズス菌データの出典:Preter V. D. et al., Am. J. Physiol-Gastr. L., 292, 358-368(2007) 〕

乳酸桿菌またはビフィズス菌による尿中の変異原性物質の低下

健康な成人に、乳酸桿菌(L.カゼイ)を100 億個以上含む生菌製剤を1日3回・3週間、もしくは、ビフィズス菌 (B.ブレーベ) を100億個以上含む発酵乳を1日3本・4週間飲用してもらい、 それぞれ加熱調理した牛肉を食べてもらった後の尿中の変異原活性※を調べたところ、乳酸桿菌もしくはビフィズス菌の飲用により尿中の変異原活性(変異原性物質)が低下しました。これは、体内の変異原性物質が低下することで、発がんのリスクが減少することを意味します。
※変異原活性…遺伝子に傷をつけて突然変異を引き起こす性質を「変異原性」といい、発がん性とも関係します。変異原性の強さを「変異原活性」といい、尿中の変異原活性が高いほど、変異原活性をもつ物質が尿中に多く排出されたことを意味します。
〔乳酸桿菌データの出典:Hayatsu H. et al., Cancer Lett., 73, 173-179(1993)〕
〔ビフィズス菌データの出典:朝原 祟ら、腸内細菌学雑誌、12、 89-96(1999)〕

便性の改善(便秘と下痢の両方の改善)

乳酸菌がつくる有機酸(乳酸や酢酸)が大腸を刺激し、ぜん動運動を促すことによって排便を促します。また、腸内フローラのバランスを改善して腸内環境を良好にし、腸のはたらき (大腸の水分吸収機能)を正常化して便の水分を調節し、便秘や下痢を改善します。

ビフィズス菌による便秘の改善

便秘傾向の高齢者にビフィズス菌 (B.ブレーベ) を100億個含む発酵乳を1日1本、4週間飲用してもらったところ、排便日数が増え、排便後の残便感が少なくなりました。
〔出典:河合光久ら、腸内細菌学雑誌、25、181-187(2011)〕

乳酸桿菌による下痢の改善

軟便で排便回数が多い健康な成人に乳酸桿菌(L.カゼイ)を400億個含む乳酸菌飲料を1日1本、4週間飲用してもらったところ、プラセボ(偽薬)群に比べ、便の硬さが正常になり、排便回数も抑制されました。
〔出典:Matsumoto K. et al., J. Biosci. Bioeng., 110, 547-552(2010) 〕


※この試験での便の硬さは、0~5の 6段階スコア (0:コロコロ状、1:硬便、2:バナナ状、3:軟便、4:泥状、5:水状)で評価しました。